Entries from 2014-12-01 to 1 month

説話と自己語り─『発心集』における目撃される死    アラリ・アリク著(小川寛大訳・木村朗子編)

1 物語への欲望 中世初期の説話における自己語りに特有の形式について議論するために、この問題に関する議論の良きたたき台として、論者(アラリ・アリク)はハンナ・アーレントの『人間の条件』の中の文章を引用する。『人間の条件』(1958年)は、政…

『発心集』の世界ー全編を貫く命題は何か

鴨長明誕生の翌年、すなわち保元元年(1156)7月、京都市民を震撼させるような出来事が起こった。保元の乱である。天皇家、摂関家、源氏、平氏のそれぞれが激突し、平安京を主戦場として凄惨な戦闘が繰り広げられた。平安京始まって以来の本格的な市街…

鴨長明の生い立ち、そしてその執念に見られるもの

『発心集』の作者、鴨長明は平安時代の末、久寿2年(1155)頃、京都の下賀茂神社(正しくは賀茂御祖(かもみおや)神社)の神職の家に生まれた。父、長継は有能な神官で、若くして河合神社(下賀茂神社の付属社)の禰宜を、そして下賀茂神社の最高の神…

鴨長明の生涯について

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある、人と栖(すみか)と、またかくのごとし。 鴨長明の父親である鴨長継は、下賀茂神社の摂社である河…