Entries from 2016-05-01 to 1 month

カフカの『城』とは何か・・・終章

飯沼信義君は、私の高校時代の同級生であるが、高校時代や大学時代はほとんど接点がなく、互いに知るところも皆無といってもよかった。しかし大学を卒業して社会人となり定年を迎える頃となり、高校時代の同期生がF-9会と称する研究報告会あるいは放談会を毎…

カフカの『城』とは何か・・・「カフカのエクリチュール」(結語)

クライストとカフカ 「火を入れている女中、暖炉でぬくまっている猫、暖をとっている哀れな年老いた男……。これらはみな自立した、自分の法則に支配された活動である。ただ書くことだけが寄る辺なく、自身のうちに安住せず、冗談であり、絶望なのだ」(1) 「カ…

カフカの『城』とは何か・・・「カフカのエクリチュール」

ヴェストヴェスト伯爵の居城である城、その城に測量士として招聘されたと信じ、さまざまな障害や困難を乗り越え目的を達しようと果敢な行動を挑むKにとって、城は確かに希望と救済の象徴であるかもしれない。さまざまに職種や任務を異にする役人たち、下級役…

カフカの『城』とは何か・・・「カフカのエクリチュール」(続き)

前のブログでも述べたように、カフカのエクリチュールを論ずるにあたっては、物語理論的なアプローチが必要不可欠である。それは物語における時間構造の問題である。一般に物語における時間というものを考えるとき、物語には二種類の時間があることが分かる…