≪気に入った映画を観る≫

 まず「カムイ外伝」。白土三平の劇画(コミック)を実写映画化したこの作品は、簡単に論ずるのが難しいようだ。ワイヤー・アクションやCGによる特殊技術を駆使した映像の作為的な不自然さばかりが酷評されがちではあるが、抜け忍として孤独な逃亡生活を送るカムイになりきった松山ケンイチの好演が光る。部落の路地や砂浜、樹木の立ち並ぶ林の中をクールな表情で走りに走るカムイ。このカムイのひたすらな疾走感が、映画のスピード感を支えているともいえる。最後の場面、何一つ遮る物のない砂浜での秘術を尽くした対決も大きな見せ場になっている。主役を支える脇役陣の奥の深い演技が絡んで生まれる人間模様の描写も、この映画を単なるアクションものの域を越えさせている。
 アクション映画といえば、「シャーロック・ホームズ(シャドウゲーム)」を観たが、これは原作からキャラクターを借りてきただけで、筋などは全く関係ない点が、面白いといえば面白い。
 「ALWAYS 三丁目の夕日」、NHKBSの放映で2日連続して観てしまった。筋立ては、ばかばかしいといえば、その通りであろうが、主役の役者一人を際立たせるための(あるいは神格化するための)映画に比べれば、涙がむしょうにこぼれて仕方がなかった。これは評価の問題というよりは、鑑賞者の生きた時代がたまたま映画に描かれた時代に重なって、不覚の感傷の涙となったのかもしれない。