≪中欧への心の旅≫
長年にわたる関心の対象、すなわち≪中欧論≫をめぐる諸テーマを思い描きながら、いささかキザな表現ではあるが、それを「心の旅」として素描すれば、おおよそ次のような内容になるだろう。
≪中欧への心の旅≫
①ウィーン・バウエルンマルクト10
グリルパルツァーのウィーン──精神のカプア──
②ボヘミアの森の作家アーダルベルト・シュティフター
自然と人間の共生──自然への畏敬の念と素朴な人間の営み──
万物を支配する「穏やかな法則」
③放浪の詩人ニコラウス・レーナウ
プスタ(大草原)が呼び起こす詩興と憂鬱
④詩人ホフマンスタールと世紀末ウィーン
伝統の継承と保守的革命
教養小説『アンドレアス』の挫折
⑤カフカの町プラハの陰翳
幻想と現実
⑥夢想と厳密性の作家ローベルト・ムージル
未完の長編小説『特性のない男』における可能性感覚
⑦ハプスブルク神話が意味するもの
ヨーゼフ・ロート『ラデツキー行進曲』
コスモポリタンなユダヤ人作家フランツ・ヴェルフェル
辺境の地(ガリチア)の作家ザッハー=マゾッホ
いわゆるハプスブルク帝国にまつわる様々な逸話や神話の虚実を検証しながら、多民族共同体の組織としての中欧が、とりわけ現代に対してもつ意義を、EUとの関連で明らかにすることが、旅路の最終的な目標となるであろう。