渋温泉・金具屋

 渋温泉は、夜間瀬川支流の横湯川沿いに温泉街が広がる。横湯川沿いの大型宿泊施設のほか、石畳の道に木造建築の旅館が並ぶ。外湯巡りが有名で共同浴場は9軒存在し、一番湯・初湯、二番湯・笹の湯、三番湯・綿の湯、四番湯・竹の湯、五番湯・松の湯、六番湯・目洗い湯、七番湯・七操の湯、八番湯・神明滝の湯、九番湯・大湯とあり、それぞれ泉質・効能が異なる。渋温泉の宿泊者には無料で外湯の鍵が貸し出され、石畳の道を宿の下駄を借りて歩きながら「九つの外湯めぐり」を楽しむことができる。開湯伝説によれば、1300年前に行基が発見したとされる。戦国時代には数多く存在する武田信玄隠し湯のひとつであった。武田信玄の寄進によって温泉寺が開かれ、川中島の戦いの折には傷ついた兵士を療養させた場所でもある。江戸時代には、佐久間象山小林一茶葛飾北斎などの文人がこの地を訪れた。俳句をたしなんだ北斎の句碑もある。
 渋温泉「歴史の宿金具屋」は、渋温泉街の中で一番有名な旅館といわれる。宮崎駿の「千と千尋の神隠し」のモデルのひとつになったといわれているからである。第二次大戦中は学童疎開にも利用されていたそうだ。金具屋には4つの建物があるが、昭和11年に完成した木造4階建ての「斉月楼」が「千と千尋の神隠し」をイメージさせてくれる建物のようである。宮大工によって、当時のお金で10万円の建築費用をかけて造られた「斉月楼」は、「大広間」とともに2003年には国の有形登録文化財にも認定された建物で、夜はライトアップされてとても美しい。金具屋から坂を少しのぼれば、行基碑がある。