≪Luzern(ルーツェルン)≫

 1984年8月31日(金)晴
 Nürnberg Hbfから7時02分発の汽車(Kurswagen)でZürichに向かう。列車はAugsburg, Buchloe, Kaufbeuren, Kemptenを経てAllgäu地方の牧草地がなだらかな起伏をなす酪農地帯をぬけ、11時14分Lindauに着いた。よく晴れてLindauの駅構内から見えるBodenseeが美しかった。遠くの水平線は靄にかすんでいたが、ゆきかう遊覧船が白く輝きながら静かな湖面を滑るように進んでいった。
 13時50分Zürich着。折よく乗り換えの列車がすぐにあったので、そのままとび乗ってLuzernへ向かう。50分ほどでLuzernに到着。ZürichーLuzern間はいくつかの美しい湖があり、列車が湖岸沿いに進むときは初めて見るスイスの美しい眺めを楽しむことができた。
 ドイツより日差しが強くむし暑い感じである。やはり緯度の関係であろうか。山国だから日中も涼しいだろうと思って、半袖のシャツを1枚しか持ってこなかったが、見事あてがはずれてしまった。
 Luzern駅の案内所ですぐホテルの一室を世話してもらうことができた。一泊47スイス・フランと少し高かったが、場所が便利なのとDuscheつきなので我慢した。ホテルの部屋は大きな道路に面しているので、西ベルリンのときと同じように車の往来の音でうるさかった。ホテル(Goldener Stern)は、レストランも兼ねているので食事をするのに便利だった。夕食は2泊ともホテルのレストランで済ませた。



                                        Luzernの町はVierwaldstättersee湖畔にあって、湖の西端から川が流れ出してLuzernの町の中を流れている。このReuss川にはいくつかの橋がかかっているが、なかでも川を斜めに横切ってかけられたKapellbrückeは木造の橋で、屋根は赤茶色の瓦葺きになっていて古い美しい橋である。                                     

 ホテルからこの川べりが近いので、Luzernの町に多い時計店や宝石店をのぞきながら、何度か散策した。西の方角にPilatus山の偉容が逆光を受けて聳え立っているのが望まれ、東の方に広がるVierwaldstätterseeも靄に霞んでいかにも水都らしい雰囲気が漂っている。位置は逆方向になるが、ふと宍道湖畔に発達した松江の町(若い時3年ほど住んだことがある)を思い出し、白い湖面と湖の水に反映する光の戯れが彩なす水都特有の雰囲気(空気感)になにか共通のものを感じた。同じ水都でもヴェネツィアは全然異質の空気に包まれている。
 日が落ちて夕靄の漂う湖岸はイルミネーションが輝き、楽団が音楽を奏で、観光地らしい賑わいをみせている。

    ≪InterlakenからWengenの村へ≫
 9月1日(土)晴
 今日も快晴で暑くなりそうである。
 町で買物をすませ、9時17分の列車でLuzern駅を出発し、Interlakenに向かった。
 今日はInterlakenからさらに足を延ばし,Jungfrauの見えるWengenという村まで行くつもりである。
 列車は途中のLungernあたりまでは比較的平坦な軌道を湖岸沿いに進むことが多かったが、Lungernを過ぎてから急に険しい山道を登り始め、スピードも落ちて、時々汽笛を鳴らしながら林の中を進んで行った。ほんの短い時間であったが、針葉樹の間から前方はるか遠いところに真白な雪をいただいたアルプスの峯が見え、思わず高潮した気分になった。
 列車は約2時間を要して、Brinzerseeの西端に位置するInterlakenの町に到着。すぐに登山電車(私鉄のためユーレイルパスは効かない)に乗り換えWengenに向かう。Lauterbrunnenで乗客はみな下車し、ここで二手に分かれて一方はWengen経由Kleine Scheidegg行きの登山電車に乗り、もう一方はGrindelwald経由Kleine Scheidegg行きの登山電車に乗るのである。


 Lauterbrunnenからは道はいよいよ険しくなり急勾配の山道をあえぐようにのぼってゆく。Lauterbrunnenの駅を出てまもなく右手の崖に大きな滝が見え、さらに滝の向こうには両側からほとんど垂直の岩壁がせり出して狭間をなしている彼方にアルプスの白い峰々が連なっているのが見えて、まったくすばらしい景観だった。
 約20分でWengenの村に到着。
 ここはちょうど番所のように山麓の牧草地帯にある小さなのどかな村であるが、近頃はご多分にもれず近代的なホテルがあちこちに建てられ、テニスコートなども作られているようだ。


 しかし周囲の景観は実にすばらしい。南側を仰ぐと眼前にJungfrauの白い峯が屹立している。Jungfrauからさらに西の方へと白い連山が続いているのが見える。下の方にはLauterbrunnenの峡谷も望まれる。Wengenの標高は1300メートルである。
 ここからロープウェイでMännlichenの展望台へ上がった。(約8分。)Männlichenの展望台からは四方八方に雄大なパノラマが広がっている。目の前、指呼のところにJungfrau, Mönch, Eiger, Schreckenhornといった壮大な峰々が並んでいるのだ。とりわけ目の前にそそり立っている感じのアイガー北壁の黒ずんだ岩肌は印象的だった。北側の眼下にはLauterbrunnenの谷間の村々が見える。
 ゆっくり時間を過ごしたかったが、帰りの汽車の時間のこともあるので再びロープウェイに乗ってWengenの村に下りた。

 MännlichenからはGrindelwaldまでひっきりなしにゴンドラが動いており、約30分でGrindelwaldの村まで下りられる。もし初めからこれがわかっていれば、帰りはゴンドラでGrindelwaldまで下りて登山電車に乗り、Lauterbrunnen経由でInterlakenに戻ることができたのに、残念なことであった。
 Interlaken(Ost)発15時39分、Luzern着17時37分の列車で、Luzernの町に帰ってきた。